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その日の放課後、授業で使った資料を返却する為、図書室に行くと、中庭で見たあの子が一人窓際の奥の席で本を読んでいた。
さっきも見覚えがあると思ったけど、つい最近、屋上でも見たことがあったのを思い出した。
よく会うなぁ…なんて思いながら、どこか気なってしまう。
外は夕日によってオレンジ色に染まっていてた。窓から射す夕日が彼女を照らし、思わず見とれてしまうほど、綺麗に輝いて見えた。
僕の気配に気づいたのか、本から顔を上げ、視線がぶつかる。
「あっ…!?」
彼女は驚き、悲鳴にも似た声をあげ、一人あたふたしてから、最終的には顔を赤らめて本で顔を隠した。
その様子が可笑しくて、吹き出しそうになるのをとっさにこらえた。
「なぁ、探してた本ってこれだろ?」
窓際奥に並ぶ本棚の間から、男子生徒が一人、彼女に声をかけた。
てっきり彼女一人だと思っていた僕は、驚いて意味もなく慌て、咄嗟に手元の資料本を開いた。
「え!?あ、う、うん!」
本を読むふりしながら、こっそり横目で様子を覗うと、声をかけられた彼女も、まだ頬を赤く染めながら、慌てふためいている。
彼は後輩だろうか、制服は真新しく、まだ少し幼さが残っている。
二人は楽しそうに会話していた。なんだか…
仲良いな…
ふと、心臓を掴まれたように、胸に違和感を覚えた。今まで感じたことのない感覚。
…なんだ
突然の胸の痛み。病気…ではないだろう。健康診断で異常はなかった。
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