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「そうか、分かったぞ。」
森川はポンと手をたたくと、まるで事件の謎を解いた探偵のように、静かな自信に満ちた表情で言った。
「あんた、テレビの取材か何かだろ?密着大木ケ原樹海、自殺志願者の苦悩、とかそういうのだろう?言っておくが、どんなに説得されようと、俺は死ぬからな。」
森川はそう言うと、再び歩き出した。
テレビの取材?わざわざ樹海に入って、自殺志願者にインタビューする、そんな番組があるのだろうか。人間とは不思議なものだ。
そんなことを考えていると、森川はまた足を止めた。
「取材の割には、カメラマンやスタッフがいないな。」
森川は辺りをキョロキョロと見渡している。
「俺もニュースの特集で見たことがあるけどよ、すみません、何とかテレビの者ですが、ここで何をしてらっしゃるんですか、とか訊くんじゃないのか?お前、何も訊いてこないな。」
「取材などではない。」
私はぶっきらぼうに答えた。これは事実だ。
「じゃあ、何なんだよ。」
森川は不機嫌そうに言葉を漏らし、再び私に目を向ける。また何か推理を始めるのかとうんざりしたが、森川の表情は真剣そのものだった。
「じゃあ…」
森川の声は震えている。
「じゃあ、あんたも同じ目的でここへ来たんだな。」
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