2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
余韻に浸っていると、クックッとシャツを引っ張られた。
「ん?」
こんな呼び方をする知り合いはいないはずだが?
信号が変わり、人が動き出す。
空調の効いた屋内を目指し足早に進む者。暑さにやられ重くなった体を引き摺るように進む者。
その人波に紛れて無視しても良かったが、呼んでいたであろう人物が、目の前で盛大にコケたとあっては、さすがに良心が痛む。
「大丈夫か?」
前屈みになりながら、覗き込む。相手は小柄な少女だった。
呼んでも応えない隼人を見かぎり、次の人へ移動しようとしたところらしい。
器用に『ビタン』と顔面を打ち付け、涙を浮かべながら隼人を睨み付ける。
「大丈夫そうだな」
大して確認もせずに結論付けると、無視して歩き出す。
最初のコメントを投稿しよう!