泡となって消える運命の少女

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余韻に浸っていると、クックッとシャツを引っ張られた。 「ん?」 こんな呼び方をする知り合いはいないはずだが? 信号が変わり、人が動き出す。 空調の効いた屋内を目指し足早に進む者。暑さにやられ重くなった体を引き摺るように進む者。 その人波に紛れて無視しても良かったが、呼んでいたであろう人物が、目の前で盛大にコケたとあっては、さすがに良心が痛む。 「大丈夫か?」 前屈みになりながら、覗き込む。相手は小柄な少女だった。 呼んでも応えない隼人を見かぎり、次の人へ移動しようとしたところらしい。 器用に『ビタン』と顔面を打ち付け、涙を浮かべながら隼人を睨み付ける。 「大丈夫そうだな」 大して確認もせずに結論付けると、無視して歩き出す。
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