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ドオン
太鼓が鳴った。戦が始まる。
みすずは蘭丸を探し、走っていた。
「蘭丸様っ!!」
蘭丸を見つけたみすずの顔が明るくなる。
蘭丸はゆっくりとみすずの方を振り向いた。
「みすず」
「お探ししました」
自分を探してくれたことが嬉しくて、蘭丸は笑顔になる。
「すみませんね。光秀様とお話をしていたもので……」
そう言った瞬間、みすずの顔が曇った。
「寝返るのですか?」
「おや。心配ですか?」
「えぇ、とっても」
蘭丸は少し間を置いて答えた。
「まだ、決まった訳ではありませんよ」
そう言うと、蘭丸はみすずの頭を撫でる。
「何があっても私についてきなさい。離れてはなりませんよ……?」
頭を撫で続ける蘭丸をみすずは少し恨めしそうに見る。子供扱いをされているようで嫌なのだろうなと、蘭丸は思っていた。
「もう。蘭丸様。いつまでも子供扱いを……っ」
案の定、みすずからは期待通りの返事が返ってくる。
「フフッ、すみませんね。
つい癖で……」
まただ…と蘭丸は思った。
また、自分のエゴだと。
しかし、それは途端に疑問へと変わる。
エゴにしては不自然すぎる――
光秀の言葉が頭の中でこだました。
エゴ………
なのだろうか――……?
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