第一夜 懐刀

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織田軍の兵士の中を、一人の男が人を探しながら歩いていた。その男は、探していた人物を見つけると、その人物に駆け寄った。 「みすず」 「頼重?」 探していた人物はこちらを見ずに反応した。 頼重と呼ばれた――長い茶色い髪を上で束ねている――男はこちらを向かない人物に疑問を投げかけた。 「何してんの?こんなところで……」 人物は頼重に振り返る。 みすずと呼ばれたのは、まだ16.7歳の幼い少女である。肩までの黒髪に、少女とは思えぬ力強い瞳が印象的だ。 「こんなに綺麗なのにさ。汚れちゃうなんて悔しいじやない?だから見とこうと思って。紫陽花(あじさい)」 そう言ってみすずが指差す先には、美しく咲く紫の紫陽花。 これから戦が始まるなんて信じられない。 .
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