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三人の神々しいお姿は何故か瞼にやきついており、今この瞬間に目を瞑ればさっきの光景が浮かんでくるだろう。混乱しながらもしっかり見ていた自分が嫌いだったが、同時にすこし褒めてやるよ。グッジョブ。
さて、露天が混浴ならば、じゃこのお二方は何しに来たのだろうか。目的をその表情から読み取ろうとして正座のまま二人を見上げたが、分からなかった。それにしても風呂上がりの女性って何で色っぽくなるんだろう。何となく居心地が悪い。
「あんた」と、母さん。「姫華ちゃんに謝ってきなさい?」
要件はそれかい? 確かに俺も謝るのは吝かではないし、そうするのが筋ってもんだとは思うけれど、いささか顔を合わすのが恥ずかしい。それに口聞いてくれるかどうか……。
でもやっぱり謝んないといけないよな、うん。
「神巫さんの部屋ってどこですか?」
☆ ☆ ☆
神巫ママに姫華の部屋を教えてもらってからすでに二十分は経過している。別に道に迷ったわけじゃなくて、足が痺れて立ち上がった途端倒れて痺れがおさまるまで時間がかかったのだ。
えらいあかっぱじをかいたぜ。顔から火がでるかと思った。
ま、そんなのは余談であり本題はこれから。ドアをノックしようとするのだが、見事に後込みした結果、立ち往生。
これら二つの要因で隣の姫華の部屋の前に着くまで二十分も要したのだ。このまま突っ立ってるのもアホらしいし、俺は覚悟を決めて木製のそれを四回叩く。中から、「どうぞ」とくぐもった声が返ってきた。
「俺だけど、……入って良いか?」
謝罪の言葉を脳裏に浮かべながら口を動かす。そういえば、合宿の時姫華から感想言え、とか言われたな……。今日言った方が良いのだろうか?
アホなことを思い出していると、入んなさい、との返事を頂戴したので入ることにする。初めて女子の部屋に入るのが風呂関連のいざこざの謝罪のため、か……。人生分からないものだ……。
どうせなら両親がいない日に彼女にお呼ばれされた、とかそんな状況が良かったな。
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