第4話:世界って広いように見えて実は狭いよな

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 姫華は、はぁ、とため息をつき、 「エロゲならよくあるわよ? だから泊まりなさい」  エロゲの主人公と俺を一緒にしないでもらおうか。すごく不愉快だ。 「モテない男のヒガミ? それ」  ……だっ、黙れ! 激しく黙れ! そもそも、俺がモテないのとおまえん家に泊まることは関係ないだろうが。 「そんなことはどうでも良いじゃない。いいから泊まりなさいよ」  自分から話をふっておいて何様のつもりなんだろう、こいつは。神巫様か(厭世たち学校の男曰わく)。 「三回回ってわんと鳴いたら泊まってやっても良いぜ?」  プライドの高い姫華のことだ。これならばもう「泊まれ」などという妄言を吐いたりしないだろう。てか、俺こそ何様? 「……あんた、あたしがそれやって嬉しいの?」  嬉しくはないな、別に。面白そうではあるけど。 「そもそも何でおまえは俺に泊まってほしいんだ?」  ま、だいたい予想はつく。おおかたクリア出来ないゲームをやらせるつもりなんだろうよ。『第五新東京市』みたいに。まだ難の半分までしか攻略してないからあまり増やさないでほしいのだが。  そんな俺の予想は、しかし思いっきり外れた。 「それは……初めて、なのよ。その……友だち……が、家に来るの。だから……」  うわっ、何かめっちゃ照れるんだが……。対応に困る。思わず、「良いよ」って言いそうになったくらいだ。  でも、やっぱりいつもの姫華らしくない。おかしい、これは明らかに。  原因は何だ? 演技……には見えないし、何よりたとえ演技でも姫華が俺より下手に出ることはありえないだろう。ならば、神巫ママか? 俺を引っ張ってくる前に姫華と話してたのあの人だし。  てか……、友だち、ね。なんか嬉しいような、残念なような、こそばゆいような……曖昧で不思議な感じだ。いつもは下僕みたいに扱われてるからな。そっか、友達か。  さて、どうしよう。泊まっても良いような気になってきた俺がいる。  ふぅ。 「……分かったよ。お言葉に甘えてお邪魔させてもらうよ」  結局、泊まることにした。俺がそう言葉を吐いた時に姫華が一瞬見せた、――本当に一瞬だけ見せた表情を、……俺は多分忘れられそうにない。
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