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別に友だちだからといって異性の友だちの家に泊まるのはやっぱり問題があるだろうことに気づいたのは、翌日の新幹線に乗っている時のことである。深く考えずとも思いつくことに考えが至らなかったのは、やはりそれだけ俺が動揺していたからなのだろう。
☆ ☆ ☆
我が人生において、おそらく最初で最後になるであろうリムジン乗車体験は十五分くらいで終わった。
神巫邸は高さ約三メートルほどのコンクリート壁で敷地をぐるりと囲まれていた。門は鉄格子状のもので、遠隔操作式なのか、運転手さんがハンドル付近にあったボタンを押すと金属が軋む特有の音を発しながら門戸を開いた。
門から屋敷までの距離は、存外近く百メートルほど。それほど近くもないのだが、俺は門から家見えないじゃんみたいなことを期待していたのであしからず。
門から進むこと五十メートルほど、赤ん坊サイズの巻き毛の天使が持つ水瓶から水が流れ出る形式の噴水があった。そう、噴水だ。ちなみに、その天使は多分白い大理石使用だろう。
そして、脇、と言えばいいのか塀寄りの位置には種々の花々が色鮮やかに咲き誇っていた。花より団子派な俺でも見とれるほど綺麗だった。
門をくぐってから百メートルの遊覧(大げさ)が終わり、リムジンは玄関先で停車した。窓際で座っていた俺は、運転手さんに頭を下げつつ一番最初に降車。さようなら、リムジン。俺が乗ることは二度とないだろう。
冗談はさて置き、俺は神巫邸を見上げた。正直な感想を言おうか。
期待はずれだった。
豪邸と言われ、俺が想像したのは、ケルン大聖堂とかの北フランス発祥・ゴシック式の尖塔アーチや窓に彩色ガラス(ステンドグラス)という、明らかに的外れなモノだったのだから想像と違うのは当然なのだが、それでもやっぱりなぁ。何となく残念な感じが否めない。ホントすいません。
さて、その神巫邸は各階同じ面積の三階建てであった。壁は、おそらくは装飾で本物ではないだろうが、赤茶けたレンガを積み重ねた感じで暖かみがあった。奥行きは、正面からじゃ分からないが、広いんだろう。
ところでさ、めっちゃ中世ヨーロッパの屋敷を期待していた俺だが、実のところ庭は枯山水を期待していたんだがないのだろうか? いや、全然あわないのは分かっているけれども。
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