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ま、確かに豪邸っちゃ豪邸である。外観は素晴らしいものだし。とりあえず内装も素晴らしいのだろう。まだ見てないけど。時価一千万のツボとか机の上に置いてありそうだなぁ……。割らないようにマジで気を付けねぇと。
「どう?」と、姫華。
「うん……。ツボとか割らないように気をつける……」
バカみたいに見上げていたからか、首が痛くなった。
「はぁ? あんた何言ってんの?」
さぁ? 俺は庶民の王道をわき目をふりながら走る男だからな、変なバイアスを持ってるんだよ。おもに漫画の知識由来かな。あと、その目で見るのを止めてください。
「さぁ、そんな御託は良いからどうぞお上がりくださいな」
うーむ……、姫華も神巫ママのおっとりさをほんのすこしだけ見習って欲しいものだ。いや、やっぱダメだ。姫華がこんな態度で俺に接してきた日にゃ、空から槍どころか核爆弾が降ってくる。
そんなこんなで俺は恐縮し、身を縮こまらせながら、最後に神巫屋敷にお邪魔させてもらった。そして、やっとこさ期待どおりのモノを得る。
「お帰りなさいませ、奥様、お嬢様」
そう、メイド隊の出迎えである。つっても五人だけどな。
一つ良いか。俺、この場にそぐわなさすぎて嫌になってきた……。
現状を正しく認識しながら、メイドさんの中でもっとも生真面目かつ序列が上っぽい人と神巫ママが話しているのを見やる。キョロキョロしたいのは山々なのだが、人の家を不躾に視線を這わせる度胸は俺にはない。人目がなかったらそのかぎりじゃないが。
と、会話を終えたらしいメイドさんが一人こちらにやって来た。見た目は、言うまでもなく若い。考えてみてほしい。若くない人がフリルのついたエプロンやカチューシャがデフォルトなメイド服を着ちゃってる様を。俺は、言葉が悪いが化け物だと思う。メイドは若くないとダメなのさ。
「ようこそおいでくださいました」
そのメイドさんはそう言って頭を下げた。ああ、そんな平身低頭はやめてください! 母さんならまだしも、俺はそんなふうにされるほど高尚な人物ではありません。俺なんかクソガキで結構です。
「……仮にもお嬢様のご友人であられる方にそのような失礼なことはできません」
きました、融通のきかない古臭い委員長タイプ! ……若干違うか。
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