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それと着替えどうしようかな……。風呂入ったときにシャワーで洗ってドライヤーで乾かすか? いや、止めよう……。何か、もの凄くみじめな気持ちになる構図だ……。我慢するしかない。
☆ ☆ ☆
「ふぅ」
全身を包む程よい温度の湯に、思わず呼気が漏れた。そして、夜空に目をやる。そう、夜空に。ここは露天風呂だ。さすがとしか言いようがない。
あの後、俺は横山さんから風呂の場所を聞いて男風呂、女風呂は一応別れている、という嬉しい情報を得て横山さんにおざなりなことを言ってから飛ぶようにして風呂に入りに来たわけである。
横山さんが何か言ってた気もするが、身体とかを洗ってるうちにどうでもよくなった。そして、全身を洗い流し、身を清めた俺は、露天風呂の存在に気づき、露天風呂あんじゃん、ヒャッホイ! みたいな感じで今に至っていた。
さて、少々ジジくさいが、言ってやるぜ。
「極楽、極楽~」
何を隠そう、俺は結構風呂好きなのだ。まあ、普段は風呂掃除がメンドクサく、また湯を張るのを待つのも嫌いだから、身体洗ったり頭洗ったりしてシャワーで済ますカラスの行水みたいな感じだが。
自分で準備しなくてもいい風呂がこんなにも素晴らしいモノだったなんて、久しぶりに思い出したよ。幸せだ。これだけでも来て良かったかもしれない。
結構単純な俺である。
「ふい~。このままずっと浸かってたいな……」
まぁ、世の中そんなに甘くなく、程なくして俺は横山さんの話を聞いてなかったのを物凄く後悔することになるのである。
露天風呂で幸福を味わうこと五分、俺は手で打つ水鉄砲がどこまで飛ぶかの実験を始めた。うーん、月の輝きを集める水しぶきはなんとも幻想的だった。そして、破滅の時が訪れた。
それは、ガラガラ、という戸を引く旋律とともに俺をおとしめた。同時に聞こえてくる女性三人の声。
何でっ!? 男女別れてんじゃなかったのっ!?
ほぼ恐慌に陥り、俺は慌ててあがろうとしたが、甲斐なくタオルを巻いた――若干残念だが――美女三名と邂逅を果たしてしまったのである。とりあえず――。
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