日曜日

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高校生になってから、私は少しだけ友達とか、恋愛とかというものに積極的になった。女の子はグループを大事にしたし、男の子が誰を好きなのか、一生懸命に知りたがった。その時、百合子は私とは別のグループにいて、互いに特別仲のいい友人、という感じではなかった。 勉強よりも遊ぶことを優先したし、誰もそれを咎めなかった。お母さんは二人目のお父さんとの子供を妊娠していて、私は純粋に妹か弟、どっちかな、なんて考えていた。 新しいお父さんが、前のお父さんよりも裕福だったので、産まれ育った古ぼけた一軒家から、近くに建った大きなマンションに引っ越すことになった。押し入れを整理していたときに、あの縫いぐるみを見付けて、意味もなく私は笑った。久しぶりに見た不細工なミッキーマウスは薄汚れていて、少しだけ黴臭かった。 受験を乗り越えて、暇を持て余していた私は、何を思ったのか、昔の家を見に行った。1年と少し前まで、私と私のお母さんと、二人のお父さんが暮らした家は跡形もなくなって、さら地になっていた。秋の太陽が照らす、庭だった場所は、砂利で覆われていて、幼い頃の記憶はその下にひっそりと埋められていた。私は、またミッキーマウスを思い出した。学校を描いた絵画の下敷になったミッキーマウスと、冷たい砂利に埋め尽された思い出は、どちらが寂しくて、黴臭いか考えて笑った。
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