嗚呼悲劇カナ

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            さてさて、二人がどうなったか…皆さん気になりますやろ?           男は約束の夜地蔵の前で女が現れるのを今か今かと待ちよりました。             しっかし、待てども待てども、夜が明けようとも男の前に女が現れる事はありゃしませんでした。             なんせぇ女は、そん時にゃぁもうこの世の人ではありませんでしたからねぇ。         その夜丑三つ時(うしみつどき)に抜け出した女は追われておった。         女の様子がおかしいと周りの遊女に告げ口されちょったのだ。           草履の鼻緒が切れて、足がもつれ… すっころんじまった所を自警団の畜生共に背中からバッサリ、やられてしもうた…         「おいおい…殺しちまって良かとですか?」       「ああ…その女は売上が落ちてたからなぁ…何でも客の童(わっぱ)に惚れちまっただかなんだかって話だ… 文字どうり切り捨てだ…」           「馬鹿な女じゃ。 この容姿なら末は太夫(たゆう)も夢ではなかったろうに…」         野ざらしにされた女を置き去りに自警団は去った。   かすかに息のある女のもとにやって来た黒が頬を舐める。         「黒ぉ…どうしよ… 身体が動かんの… あの人の所に行けないの… 約束…守れなくなってしもうた…」       弱々しく伸びてきた手が黒の頭を優しく撫でた。        ゴロゴロと喉を鳴らして頭を撫でる手を舐めてそれに答えると「お前は優しいね…?」っと呟いた。            「ああ…あん人の所へ行きたい… ずっと…っ…傍に居りた…い…」             その女の言葉を聞きよったのは、女の愛猫の黒だけでした。           頭を撫でていた手は力無く地面へと落ち、女が事切れた事を語った。            
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