多分、わたしは‥

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 手術室に入ったのが午後2時すぎ。終了は夜の11時すぎだった。予定では4時間くらいの手術って話だったのに、かなり手こずったらしい。 「マジだぜ!」と叫んだ後も僕はその後も両親そっちのけで看護師さん相手に大声でバカな話ばかりしていた。 麻酔を醒ますための興奮剤が効きすぎていたのだろうか? 「カモン・ベイベー!ロッケンロー!」意味不明なテンションのまま、ノリノリでICUへ運ばれて行くのだった‥ しかし、おごる平家もひさひからず‥その夢から醒めると厳しい現実が団体様でご到着したのだった。 午前0時 鼻から管。 両手に点滴の管。 右手の頸動脈にも管。 頭にも管。 下半身のアソコにも管。 管・管・管‥ 胸には心電図の電極。 両手には点滴の管の閉塞をお知らせする電極。 頭にも脳波の電極。 電極・電極・電極‥ 頭は包帯グルグル巻き。 顔は鼻と口くらいしか見えてなさそう。 頭の切ったり縫ったりなんて所は局部麻酔が効いているのか、痛くはないけど、鼻から管が胃の中まで入っていて、それが胃の内側に当たって痛い。 つまりは酷い有り様。 熱が38度を割らない。 氷で冷やす。 頭を冷やすのではなく。 氷漬けにして体中を冷やすって感じ。 熱と煩わしさで眠れない。 暗闇の中1人戦う。 入って来るとき恥ずかしかったからナースコールは無しだ! ようやく眠りを勝ち得たのは、午前4時を過ぎただったと記憶している。 蛍光灯がつき、朝が来たのを知った。このICUには窓がなかった。 一人部屋なのは術後だからなんだろうか? 昨夜眠れずにいた時、ある事を兎に角いろいろ考えた。頭の中で様々なパターンを組み立て、実行し、反省し、修正した。 そして、ついにその時はやって来た。 まだ二十歳前後と覚しき看護師さんがカルテみたいなの片手にパタパタとやってくる。 しっかり目が合う。 可愛い声で 『お目覚めですね?』 「‥」 『あの、大丈夫ですか?』 「‥」 『大丈夫ですよね?』 「多分、私は3人目だと思うから‥」 ― 沈黙 ― カラーン‥ カルテが落ちる。 看護師さん腰砕け。 その場にしゃがみ込んで声を出して笑った。 彼女もエヴァンゲリオン知っていたらしい。 あんまり若い子だと元ネタ知らないかも?っていう危うさがあったけど、なんとかウケたので安心した。 昨夜、苦しい中で必死に考えてたのはコレ。この姿なんで折角だからどうにかネタにしてやりたかったんだよね。
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