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1 青春したいぜ
期末が終わった。
帰宅部のオレは自由だ。吉田と斎藤は野球部の部室に飛んでいった。
いいな…あいつらは。青春なんてものをしてるみたいだ。
そういえば、田中も最近野球部に入ったんだっけな。
ルーキーズの影響ってやつかぁ?
そりゃあ、俺も青春したいさ。だけどなぁ…今更運動部もないよな。
玄関で靴を脱いでいると、何人かの女子のグループがキャラキャラ言いながらやってきた。
…紗智のグループだ。愛もいる。
「ヤギー! どっか行くとこあるの? まさか、真っ直ぐおウチじゃないっしょ~?」
紗智がいつもの様に、からかうような口調で声を掛けてきたが…そんなの無視だ。
「ねぇ、アタシらと一緒にカラオケでハジケない?」
「……遠慮しとく」
「ヤギって、いっつも無愛想なんだから」
紗智は苦笑いしながら、さっさと靴を履き替えると、オレを追い抜いて外へと出ていった。いつも紗智に金魚のフンのようにくっついてる、玲奈と春奈も後に続いた。
愛も――。
愛とすれちがう時…彼女の髪からシャンプーの香りがした。
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