chapter:3

2/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
この前来たときも思ったことだけれど、このホテルのドアはやっぱりどこか不思議だ。 小さくノックすると、白いシャツと黒いタイトなスーツ姿で出てきた雄一を見た途端、まるでこれは夢なんじゃないかと思ってしまった。 あたしをその視線で認めた雄一は、パッと大きな目を嬉しそうに瞬かせて、それでも穏やかな口調で来てくれてありがとう、と笑った。 こんなとき、晶ならどう言うだろう。 何も言わずに抱き締めて、真っ直ぐベッドか、あいつなら。 こんばんは。 こんなときでさえ晶の顔を思い出している自分に言いようのない罪悪感を感じて、そう言いながら意味もなく笑みを浮かべると、雄一は不思議そうに首を傾げて、慣れた仕草であたしを部屋の中に招き入れた。 行動の全てが欲求に直結していて、動物的な晶とは正反対な、紳士的で理性のあるエスコート。 「来てくれないと思ってた」 「どうして?」 「彼氏に捕まったら、未羽ちゃんは迷わずそっちに行っちゃうでしょ」 「.....雄一」 「ん?」 「その未羽ちゃんっての、気持ち悪い。年上なのに」 「そういうもんかなー。年なんて関係なくね?呼び方とかさ」 「あたしは気にする」
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!