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私は、彼の眠る棺を前に、ただ泣く事しかできなかった。
彼は片目を開け、その目は私をジッと見ていた。
それが私の胸に突き刺さる。
「ごめんね。遅くなってごめんなさい」
それしか言えなかった。どれだけ待っていたのだろう。謝る事しかできない私を、どう思っているのだろう。
私は、火葬場には行かず、しばらくその場に座っていた。
彼を送る曲だけが流れ続けていて、私は思い出した。彼がこの曲は好きやから覚えてて…と言っていた事を…。
[この曲やったんやぁ]
私は、適当にしか聞いていなかった為、そんな会話も忘れていたのだ。
【I'll Be Missing You】
私は、いたたまれない気持ちになり、逃げるように自宅へと帰った。
家に帰り、しばらくは納得しようとしたが、次々と甦る後悔に涙が出た。
キスの約束…
私はせずに逃げ帰った。
時計を見ると、もう火葬は終わっているだろう時間だった。
守れなかった。また後悔が押し寄せる。
彼は幸せだったのだろうか…
こんな私と出逢った意味があったのだろうか…
私は本当に愛せていたのだろうか…
彼はそれを感じれていたのだろうか…
後悔ばかりが私を締め付けた。
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