―決勝⑧―

8/12
前へ
/402ページ
次へ
『アメリカ合衆国、選手の交代をお知らせいたします。 ピンチヒッター…・・君』 続くバッターにも、代打が出された。 代打バッターは左打席に入り、バットを大きく構えた。 遼)「……(構えが大きいな…恐らく、一発のあるバッターだろう…)」 真人)「……」 《ズキッ…ズキッ…!》 真人)「……(右足は立ってるだけで痛む…。 肩はまだ大丈夫だとしても…まずいな…)」 俺は痛みを必死に堪えながら遼のサインを見る。 遼)「……(とにかく、真人の状態を考えれば無茶はできない…)」 《カチャ、ググ…》 真人)「――…っ!」 《ギュォォン!》 《ドシィィイ!》 審判)「ストライーク!」 初球、外角低めにライズボールを決めた。 真人)「ふぅー…!」 延長に入ってから感じていたあの別世界にいる感覚はもうない。 痛みで無理矢理、現実世界に引き戻された気分だ。 真人)「……(現実逃避してるみたいだな…)」 俺は苦笑しながら一旦、間を置いて天を仰いだ。 ……と、 華穂)「真人…! 頑張って…!」 バックネット裏に、祈りながら俺を見つめる華穂の姿を見つけた。 真人)「……(相変わらず目敏いな…俺は…)」 俺は苦笑しながら帽子を被り直す。 真人)「……(見てろよ華穂…おまえの彼氏は――…)」 《カチャ、ググ…》 遼)「――…!?(わ、ワインドアップ!?)」 真人)「――…っぁあ!(世界一だぞ!)」 《ギュォォォン!!》 《ドシィィィイ!!》 審判)「ス…ストライク、ツー!」 【96mph】    
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2483人が本棚に入れています
本棚に追加