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場所は変わって近くのファストフード。こんな日でも客は絶えないようで多少並んでから席につく。
「あの,えーと。亜心さん,で良いですか?」
「構わんよ,妥当じゃろ,それ以上近づいてはいかんがな」
緊張から解き放たれたせいか青年は呆けた顔を見せてはいるが亜心にしてみれば仕事がしやすい程度の意味でしかない。
「心,の一部を引き換えに願いを叶えてもらえるんですよね」
「何度も説明させるでない」
「す,すいません。僕が読んだ本では悪魔って魂全部持ってっちゃうのが普通だったのでつい!」
「ふん,そんなことをしてどうする。種が零では花は咲かんよ」
大昔の話だ。今ではそんな悪魔いやしない。
「しかし,お主。こんなもので銀行強盗が出来るとでも思っていたのか?」
弾は発射されるだろうがチャチな拳銃を弄ぶ。
「え!?あ!?あれ!?いつのまに!」
「こんな金属でお主の人生が変わるようなら最初から変わっておる」
亜心はそういうと先ほど買った安いハンバーガーにその拳銃を挟み込んで一口で食べてしまった。
幸いなのかなんなのか,店内でそれを見ていた者はいないようで騒ぎにはならなかった。
「……………もう,駄目です。銃も無くなったら,もう。聞いて下さい,僕はね―――――」
「嫌だ。お主の下らない身の上話など聞きたくもない。そんなものは天使にでも聞かせてやれ」
青年は唖然としている。およそ亜心を優しいお姉さんとでも勘違いしていたのだろう。
「亜心の聞きたいのは,お主の願いじゃ。それだけで良い,ただ,それに見合ったものは貰っていくがの」
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