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「カルデ=ラ!とまりなさい!
カルデ=ラ!」
女性体は止まらなかった。
カルデ=ラは上半身に脂肪が少ない割に大腿筋は発達していたから。
彼女の趣味はオリンピックという古代祭典の映像記録の研究だったもんだから。
僕はよく、JUDOという、重心を崩しあう遊戯に付き合わされてた。
不思議で、しかも痛覚を伴う遊戯だった。
痛覚を感じるのは僕だけだったけど。
あと、東アジア州に伝承されていた
舞い
も好きだったな。
徹夜で極彩色の衣服を作り、悦に入って一人で舞という動きをしていたのを覚えている。
…話を戻そう。
「カルデ=ラ!なぜ止まらない?」
カルデ=ラは振り向かずに叫んだ。
「とまったらあなた追い付くじゃない!」
そんな問答を繰り返しているうちに
僕の肺から空気はつきて、僕はとまった。
止まらずに通路を駆けていくカルデ=ラに、僕はしかたなく
意識を集中し、こめかみの血管を隆起させつつ、「共振」を使った。
壁が振動する。
天井の配管にひびが入る。
振動とひびは不快な金属音をたてながら彼女のもとまで急速に伸び、彼女を包む服の一部が弾けるように破裂した。
その短い間に僕がしていたことは祈りだった。
共振による彼女の臓器機能への損害が最小限でありますように。
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