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『なあ兄弟、医者の言うことが何だっていうんだい?オイラの味はあの頃のままだぜ?』
変わらない優しさがある。
それがサファイアなんだと俺は知った。
『なあ兄弟…1口だけでもいい…もう1度オイラにチャンスをくれねーか?』
サファイアの青く澄んだ瞳は真っ直ぐに俺を見ていた。
『悪かったよサファイア…俺達…もう1度やり直せるかな?』
俺も真っ直ぐにサファイアを見つめていた。
『へへへw約束しただろ?オイラ達の絆は永遠だ』
サファイアは潤んだ瞳でそう言ってくれた。
もう、1人と1瓶の間には何も邪魔するものはなかった。
グラスに氷を落とし、トニックウォーターが注がれ、その上からサファイアも注がれた。
マドラーで攪拌されたサファイアはベストな味に仕上がった。
『今までごめんな…サファイア…』
俺はグラスを手に取る。
『長い人生さ…そんなこともある…さ、一気にやってくれ!』
サファイアに促され俺はグラスに口をつけた。
ガチャッ
バタンッ
『ただいま~……あー!!あんたアルコール暫くやめるんじゃなかったの!?』
カミさんが帰ってきた。
『…み、見てただけだよ』
バシャッ
俺とサファイアの約束は、排水溝へと消えていった。
END
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