トマトジュース

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「そういえば、先輩。今日は部活休みなのに、部活するんですか?」 廊下を歩いていると、思い出したように後輩が言った。 後輩からは『先輩は、自分の見学のために部活をする』ように見えて当然だろう。 「ん」 レイの反応は適当な返事だったが、肯定の返事であることは誰でもわかる。 「なんか…すいません」 後輩に謝られたが、何故謝られたのか理解できなかったレイは、聞かなかった事にした。 「飽きたら帰って」 レイはそう言うと、教室のドアを開けた。 美術室特有の香…絵の具や木材…レイや後ろにいる男子生徒にとっては嗅ぎ慣れた匂いが広がる。 レイはその辺から描きかけの画板を持ってきた。絵の具なども適当にちゃちゃっと準備し、その辺の椅子に座った。 筆を持ち、パレットにのせ、画板にのせる。 そんな作業が暫く続き、画板はしだいに紅く、黒く染まっていく。 「すわれば」 振り返りもせず、教室の入口辺りで見ていた後輩に促す。 「あ、はい。ありがとうございます…」 レイの作業に見入っていた後輩は、レイの言葉で我に還ったようだった。 しばらく沈黙の時が流れた。その間にも、レイの画板は紅く黒く染まっていた。 「先輩、今度の絵は何がテーマですか?」 「さぁ」 「題名とかは?」 「…」 レイの手が止まった。軽く考え込んでいる。 「…特に…決めてない」 なんで私はこの絵を描いているのか、まるでわかっていないような反応だった。 「へええ…先輩は感覚で描くんですね。…そういえば、先輩のデッサンは見た事ないです。展示会とか、全部イラストとかデザインの部門でしたよね。」 レイは軽く頭を傾げる。 「さあ…」 まるで他人事のように答えた。何に関しても興味のないレイは自分の事ですら、どうでもいいらしい。 「先輩って変わってますね。そう言われませんか?友達とかから。」 「さあ」 また、しばらく沈黙が続いた。カツンと筆を置く音が響いた。 「完成…ですか?」 「まだ」 「そうですか。…どういう事イメージして描いてるんですか?」 「…」 レイの無表情が少し崩れた。不快そうに顔を歪ませる。 「あ…あの、いい絵を描く為の参考程度なので…えっと… 「欲望、願望、過去」
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