TheSCENARIO

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★ 「昨夜、桜小学校に通っている六年生の武田仁君が遺体で発見されました。警察は何者かに殺害されたものと見て捜査を進めています。」 テレビには遺体の見つかった公園が映されていた。アナウンサーの簡単な説明と共に、映像は被害者の通っていた桜小学校に切り替わる。昼間からテレビにかじりついている佐々木和也は、朝からずっとこのニュースを見ていた。桜小学校が映る度に音量を上げ、テレビをじっとみつめるが、ため息と共に音量を下げる。そんなことをずっと繰り返しながら、ついに昼間になってしまった。和也は再び音量を上げた。現地にいる記者が状況を説明する。すると桜小学校の校長である金田信義が報道陣の前に姿を現した。眠そうな目をぱっちりと開け、あらかじめ準備しておいた録画のボタンを押した。報道陣にありきたりな質問をされた金田は中々口を開かない。和也は楽しそうな顔で無精ひげをいじった。報道陣は少しざわつき始めた。和也が受話器を取ろうとしたその瞬間、金田は思い切りこちらをにらみつけた。 「命はまるで火のようだ。ふっと息を吹きかけるだけで簡単に消えて無くなってしまう。そんな儚いものを守るには限界がある。これで仁君以外の大切な命を守れるなら、私はそれを選んだまでです。」 金田は依然こちらをにらんでいる。報道陣は金田の意味深な発言に深く突っ込もうとしたが、きっちり十秒後に報道陣の前を去った。和也は一人で拍手をして喚声を上げた。
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