愛しい彼女にキスをした

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星が無造作に散りばめられた暗く寒い冬の夜。 「……今日は、冷えるな」 いつものように生徒会の書類整理と帰宅前の校舎の巡回を終え施錠した僕は空を見上げ何気無しに呟いた。 息が純白に零れてしまう程の極寒状態のまま帰ったらまず何をしようかなんて考えていた僕だったのだけれど。 「うわぁ、雪だぁ~!」 そんな気の抜けたような女子の声に思考回路を遮断された僕は目の前の校庭へと視線を向けた。 そして視線を向けた、そこには。 「……雪音」 背筋をピン、と伸ばし自らの片手を空高く掲げる雪音の姿。 いつの間にか、はらはらと舞い落ちて来た冷たい雪に瞳を奪われている雪音はとても綺麗で。 正直な話、僅かな間だったけれど僕は彼女に胸を高鳴らせた。 そんな胸の高鳴りをごまかすように一歩一歩彼女に近づいた僕は未だに僕の気配に気づかず雪に見とれている雪音に声をかける。 「雪音」 「え……あ!塔弥さん」 呼び掛けて見れば案外、気づくのには早いもので雪音は直ぐさま振り向いて普段のにこにことした、笑顔を僕に向けた。 「キミ……こんなに夜遅くまで、何してたの」 「塔弥さんを待ってたんです」 「…………」 幾分、苛立った声で言ったつもりが、どうやら彼女には効果がないらしく雪音はヘラリと言った様子で微笑みを向けてきた。 いくら、この町が比較的、問題も少なく安心とはいえ夜に女子が一人で居たら危ないと思うんだけど。 このコは、どうして、そういった危機管理能力が低いんだろうか。 .
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