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心地よい初夏の風が通り抜ける家の中。
母親がちょっとおしゃれをした娘の金色の髪をとかしている。
「素敵な恋ね、お母さん。」
うっとりとした表情で娘が母親に言うと、髪をまとめながら母親は言った。
「でしょ。私も、最初に聞いた時は憧れたわ。」
そういいながら、まとめた髪をアップにする。
今日はこの村のお祭りの日。年頃になった娘がおしゃれするのを手伝っているのだ。
「私も、そんな恋がしてみたいな。」
そう言う娘に、母親は微笑みながら鏡を渡し出来栄えを確認させる。
「出来るわよ、私の娘ですもの。」
自信たっぷりの母親の言葉に娘は瞳を輝かせながら振り向いた。
「本当⁉⁉」
「えぇ、本当よ。いいなら早く行きなさいマリア。お迎えが来てるわよ。」
そう言って、ドアを指さすと黒髪の青年が立っていた。娘は、ホホを赤く染めると立ち上がり彼の元へ走る。
「行って来ます。」
そう言って、二人は手をつないで祭へと言った。
その後ろ姿を見送ると、優しく微笑み、壁にかけてある一枚の写真に近づく。
「私も、出来たからマリアにも出来ますよね、お父さん、お母さん。」
その写真には教会の前で幸せそうに笑い寄り添っているアクアとジークが写っていた。
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