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―Side by 希望―
私は結局、放課後になった今もしぃに例の封筒を渡せていなかった。
放課後になったら渡そうと思ってたんだけど、しぃはHRが終わると同時に走って部活に行ってしまった。
どうしよう……
このまま封筒を机の上に置いて帰っちゃおうかな……
でも、急ぎの用事だったらまずいよね……
今でも十分まずいけど……
明日じゃさすがに遅すぎるよね。
だけど……
色んな考えが浮かんでは消え浮かんで消えを繰り返していたけど、所詮、答えはひとつしかなかった。
両手で自分の頬を叩いて気合いを入れ、キッとした表情で由美と紗柚に宣言してやった。
「さっと行ってさっと渡して来るから。
待ってて!!」
気合いを感じたのだろう、二人も妙に高いテンションで、
「うん!わかった!」
「行ってらっしゃい!!」
「行って来ます!!」
そう。封筒を渡すだけ。封筒を渡すだけ。他にはなにも話さなければいいんだから。
私は呪文のように、頭の中でそんな言葉を繰り返しながら歩みを進めた。
あたしの出た後の教室で二人がこんなことを話していたなんて、知る由もなかった。
「しぃ、部活だよね?」
「うん。てことは当然……」
「周り男だらけだよね……」
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