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僕と未央は一台のスクーターに乗り、家への道を走る。
学校を出てから…いや、教室を出てから未央は一言も言葉を発さない。ただ、何か思い悩んでるかのような表情でただ一点を見つめている。
でも僕はそのことに触れることはなかった。
たとえ触れても未央のことだから自分から言い出すまで教えてはもらえない。
ゴゴゴゴゴゴォォォ!
帰り道の途中にある連邦軍の軍用地の傍を通ると、ひと際大きく戦闘機の離発着の音が耳をつんざく。
その音を聞いた瞬間、僕の肩を掴んでいる未央の手に力が入る。
軽い痛みを覚えながらも僕は何も言わずそっとバックミラーで未央の様子を覗き見る。
未央は強張った顔でジッと軍用地の方を見つめている。
その眼には恐れのような悲しみのような何とも言えない色が宿っていた。
「未……」
「真央……」
僕が未央に声をかけようとするのと同時に未央が僕に話しかけてくる。
「何?」
「……」
思いつめたような目をして未央は黙り込む。
「未央?」
「……ごめん、何でもない」
ぎこちない笑みを浮かべて未央は再び口を閉ざしてしまった。
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