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コツコツコツ……
無機質なリノリウムの廊下に青年の歩く靴音が響く。
ピピピッ……
青年の胸ポケットから高性能通信機がメールを受信したことを伝える音を鳴らす。
青年は歩みを止めると胸ポケットからソレを出す。
送信者の名前を確認した瞬間青年の顔が緩む。通信機を開き、メールを確認する。と、ますます青年は顔を緩ませる。
「マーオッ、何一人でニヤけてんの?」
そこに横から能天気な声をかけられる。
青年はそちらへ振り向くと、声の主を確認する。
そこには青年より頭一つ分背の高い、赤毛の男がニヤニヤしながら立っている。
「クレイン」
「何? 彼女からラブメールでも入ってきたのかい?」
赤毛の男は青年に近付くと肩を抱き、んっ?と青年の顔を覗き込む。その目にはいたずらっ子の様な光を宿している。
それを認めて青年は小さく笑うと肩を竦める。
「違うよ、妹からさ」
「妹?」
「そう。それに君だって知ってるだろ? 僕に彼女がいないってことは」
その言葉に赤毛の男はああ、そうだったね、と少々オーバーアクション気味に肩を竦める。
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