序章

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「これでもか!!」 と、言わんばかりにびゅーびゅー吹き荒れる北風に立ち向かうように、一人の少女が街の商店街を歩いていた。 年も明けて数日だが、天気予報によると去年の最低気温を早くも下回ったのだという。 時は真昼というのに、商店街に人はほとんどいなかった。 正月休みに極寒。街が過疎化するのは当然だった。 だが彼女にはそんな今日くらいしか、外に出かける事が出来ない。 今にも雪が降ってきそうな空を見上げながら、少女は立ち止まって白いため息をつく。 ――私はどうしてここにいるのだろう。 ここにいる意味はなんだろう―― 風に飛ばないように、少女はカチューシャを手で押さえて、また歩き出した。
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