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男性は得意気にそう言い放つと自分とぶつかってきた少年を睨みつけた。
「ロールだか、ローラーだか知らねぇが、そんなマイナーな貴族なんて知らねえよ! 大体、今は貴族もくそもねぇだろ!」
少年は負けずに言い返した。
その声はふと聞き耳をたてていたカイの耳に入った。
(この声まさか――)
カイは荷物を片手に野次馬の中に加わっていき、人を押しのけ、野次馬の最前列に向かった。
そしてカイの目に入ったのは、肩くらいまである藍色の髪の少年だった。
その碧眼の鋭い眼光はしっかりと貴族の男性を睨んでおり、その眼光に男性は怖じ気付いた。
(はぁ……。やっぱりそうか)
カイは小さく溜め息をつくと、ガリガリと髪をかき、野次馬から一歩踏み出した。
「レクサス! 何やってんのさ!」
その瞬間、少年や男性、野次馬の視線が全てカイに向いた。
「カイ……?」
碧眼の少年は小さくそう呟いた。
「はぁ……。懐かしい声を聞いたと思ったらこれだもんな」
カイはゆっくりと少年に近付いた。
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