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小学5年、4月生まれのため、ただいま11才。
あたし、美保子は、テレビにかじりつくようにして、その画面を見ていた。
「美保子っ、テレビ見えないだろっ」
兄、高校2年の輝は、あたしの後ろで吠える。
うるさい、輝。
あたしはテレビに夢中なのだ。
せっかくいい天気に晴れた日曜なのだから、どっか外に遊びにいけばいい。
あたしは輝にそう言うのも億劫で、ただひたすらテレビに夢中になっていた。
何度も何度も繰り返して見た。
テレビの中は、バイクレースである。
予約して撮ったはずの見たかった深夜映画ではなく、これが残っていたときには、そりゃあものすごくショックだった。
別にレースなんてものには興味はなかったし、バイクなんてものにも興味はなかった。
むぅって頬を膨らませて、でも撮ったものだから、一応、残していた。
最初は見るつもりはなかったけど、暇だったからこのレースをテレビに流していただけだった。
でも……、でも、それが一瞬にしてあたしの宝物になった。
スタートのポジション争い、カーブの体を傾けるその角度。
倒れてしまうんじゃないかって思うほど傾けて、直線コースで真っ直ぐに立て直してスピードを更に加速していく。
最後の最後まで2台のバイクが争いあい、1着でゴールを決めた彼はその片腕を上げてガッツポーズを決める。
それだけでも、あたしの興味をひいたのに…。
表彰台、1位のそこに立つ人は、もっのすごくかっこいい人だった。
あたしは彼に一目惚れをした。
名前は羽柴戒音。
カイオンだよ?カイオンっ。
かっこよくない?
あたしなんてミホコなんていう普通の名前なのに。
バイク雑誌なんていうものを探して私が調べてみたところ、戒音は、うちの輝と同じ高校2年生だった。
現役高校生の天才バイクレーサーというものらしい。
あたしの鼓動はそれだけで高鳴る。
すごいって感動してしまう。
憧れというか、もう、この人しかいないって思った。
あたしの初めての彼氏っ。
こんな人じゃないと嫌だ。
輝みたいな普通の人は嫌だ。
年の差なんて気にしないっ。
あたしは戒音の彼女になりたいっ。
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