第一章 名家

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ガラガラ- 「「「ただいま」」」 3つのただいまがいっぺんに聞こえてきた。 「いや~、そこでヒビキくんたちとあっちゃってね。一緒に帰ってきたよ」 「お帰りなさいませ、父上。今日はお客様がお見えですよ」 「おじゃましてます」 「ご無沙汰してます」 「あれ~華也くんは珍しいね。おっコウキ!ちょうどいいところに来た。君の独り立ちの手続きをしてきたよ。このまま関東支部の所属だ」 おぉついに俺も… 「よろしくなコウキ」 シュッと例のポーズで出てきたヒビキさん。 「いや~思い出すなぁ。俺の独り立ちは急遽だったな~」 トドロキさん今日も元気がいい。 「負けないからな」 キョウキさんも相変わらずだが祝福してくれてるんだな。 「華也くんもそろそろ襲名なんじゃない?」 気を遣ったのかおやっさんがそう尋ねた。 「えぇ。実は今日そのことで伺ったんです」 「なるほど…。確かに今回の会議には加賀美家の襲名の話しもでてたけど…。でも本家は北陸支部だろ?」 「そうなんですけど、じつはコウキのことで。襲名式の助役としてそちらのコウキを貸していただけませんか?」 そういうことか。わざわざ筋を通すとは。ちょっと見直したかな。 「ふぅん。そういうことだったのか。でもなんでわざわざ?」 「まぁきっとコウキは関東支部に所属すると思ってましたから。それと襲名の心構えを宗家のイブキさんに教えてもらいたくて…」 「なるほど。ならウチのイブキも貸そう」 「ありがとうございます」 華也は深々と頭を下げた。 コウキは意外と事が重大であることを感じた。 「ヒビキさんはイブキさんの襲名のとき太鼓を叩いたんですよね?」 「あぁそうだよ」 「俺の太鼓の指導をしてください」 何故かはわからん。本家のためなど一度も考えたこともないが、華也の態度に胸打たれるものがあった。 「なにせ襲名式だからな。甘くはしないぞ」 「ヒビキさん俺も付き合いますよ」 「キョウキさん…」 「勘違いすんなよ。同じ関東支部の太鼓使いがなめられるのはごめんだからな」 三人の胸の奥が熱いなにかが燃え始めたときだった。
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