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「受け身じゃ駄目よ。
攻めてくべきだと思うわ」
いきなり、シエルがそんなことを言い出した。
「…何の話だ」
「あんたの記憶のことよ!
あんたね、じっとしててある日突然記憶が戻るなんてあまっちょろいこと、考えてたんじゃないでしょうね!?」
「考えてた。」
「即答するんじゃないわよ、このバカ野郎が。」
「記憶はいきなり戻る物じゃなかったのか?」
確認するようにアーヴァントに話を振る。
記憶を取り戻そうと焦っていた俺に、アーヴァントがこう言ったのだ。
しかし。
「ヨシュ何バカなこと言ってんのさ。
子供だってもうちょっとマシな考え持ってるって」
不意に殺意がわいた。
「記憶を戻すには、外からなんらかの衝撃を加えるしかないと思うの」
「…シエル。
その手に持った鈍器をしまえ。」
シエルが「えー」と口を尖らせる。
そしてかわいく上目使いになり、人差し指を唇に当てて首を斜め45度に傾けた。
「…駄目?」
「駄目。」
そんな計算されつくしたポーズを取っても無意味だ。
…約1名を除いて。
「ちっケチ。」
シエルが手に隠し持っていた花瓶を元の場所に戻した。
お前そんな物で殴ろうとしてたのか。
打ち所が悪ければ死ぬぞ。
…約1名はそれでもさっきのポーズでお願いされれば、喜んで殴られるだろうが。
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