忘れた笑い方

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病室に戻ると、マキのベッドの前に担当看護師のアヤナさんが仁王立ちをして待ち構えといた。 「マキちゃん!あれほど無断で抜け出しちゃダメっていったでしょうが!!!!」 「え~…無断じゃないよ。ちゃんと置き手紙書いてたし」 「置き手紙もだめ!!ちゃんと看護師でもお医者さんでもいいから直接一言言わなきゃ意味ないの」 「はぁ~い」 マキは面倒くさそうに返事をするとベッドにはいった。 それを見て安心したのか、アヤナは軽く息をつきマキに検温を促しながら本来の用件を話し出した。 「あとね。今日からマキちゃんの担当医が変わったから後で紹介するわ」 「へ?ゴリラ先生じゃないの?」 マキがここへ入院した日、診てくれてたのはゴリラにそっくりなおじちゃん先生だった。 だからずっとゴリラ先生が担当医だと思っていたのだ。 「ゴリラなんて言わないの!マサキ先生は本来内科医だからね。小児科医でもあるけれどマキちゃんの病気は循環器系だからそっちが専門の小児科医に変わることになったの」 ピピッと検温終了の電子音がしたので体温計をアヤナヘ渡す。マキの体温をカルテへ書き込みながら 「そっちのほうがマキちゃんも安心でしょう?」 とアヤナはマキに微笑んだ。 「あとでまた先生連れてくるからちゃんと病室にいてね!」 そう言い残しアヤナが去ると、マキはゴロンとベッドに横たわる。 (誰が担当医でも変わらないよ) 自分の病気の事は既に習知してるし、治る確率が低いのも理解してる。 だったら自分の担当医が専門の医師だろうがそうじゃなかろうが直接関係ない。 マキは何も考えないように目を閉じた。
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