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鏡に写ったかずは、ちゃんと女の子だった。
「すごい…ぴぃちゃん…」
目を見開いてるのに、ちょっと苦笑いされて。
だいっきらいだった
広くしっかりしてくる肩も
ゴツゴツしてきた足も
胸のないのも、ヒゲも。
きらいなものぜんぶ、服と、靴と、お化粧が拭い去ってくれて。
「髪も、可愛いでしょ?」
ぴぃちゃんの綺麗な指先が、カールした毛先をくるんと掬った。
「でも…なんで?」
「ん?クリスマスプレゼント?」
黒目がちな目で見つめられて。
「じんに、見せたい?」
耳元で囁かれた優しい響き。
「こ、こんなの見せたら、か…お、れ、変態だと思われんじゃん」
ウソ。ほんとは見て欲しいの。
たった一瞬でも、女の子と思ってくれるなら。
「ざーんねん。デートのセッティングしてあんのに」
笑いながら携帯を振って。
「断ったほうがい?」
意地悪に聞いてくる。
「……ゃ…だ…//」
真っ赤になったかずの、本音。
満足そうに微笑んだぴぃちゃんが、なにを考えてるかなんて分かんないけど。
かずにはもう、限界だったんだ。
オトコとしてしか生きれない、現実が。
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