死ぬのは、まだ…

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  指定されたのは有名なクリスマススポット。 ツリーの下で、腕時計に目をやる、見慣れた彼の立ち姿。 「あかにし」 呼んだ声に反応して振り向いた笑顔が、途端に目を見開いた。 「か、め?」 やっとそれだけ言って、かずの格好を上から下まで何度も見て。 「ぴぃちゃんのがよかった?」 つんとした振りして言ったけど、チクンと胸が痛んだ。 「び、っくり、したー」 ほっと胸を撫で下ろして、ははっと力なく笑う彼。 「ハメられたかと思ったし」 優しい笑顔が、心を撫でて。 今さらにどきどきうるさい心臓。 「でも、よくバレなかったね」 気付かれたくなくて、周りを見回した。 「あー…みんな自分たちの世界だし?」 暗くなりかけたその場所では、カップルたちが1ミリの距離ももどかしいようにキスを交わしてる。 ……幸せそう、…いいな…… いきなり掴まれた腕で、「行こ?」って身ぶりで示された。 少し後ろから盗み見る、彼の横顔。 ツリーの青い光の中で、すごく綺麗で。 ……好きだな……じん…… ふっくらした唇に目を奪われながら。 溢れそうな想いが、伝わればいいのに。  
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