死ぬのは、まだ…

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  …──パタン 閉まった扉の音に、緊張する。 後ろから入ってきた彼が、慣れた風に鍵をかけて。 「すっげ。さすがアイドル」 悪戯が成功した子供みたいに、けらけら笑った。 「バレたらってちょっとビビった」 “同性同士でのご利用は控えさせていただきます” 受付に何気なく書いてあるそのコトバを気にしたのは、かずだけじゃないみたい。 「スカート履いてたら突っ込まないでしょ?」 笑ったかずは、不自然に見えてないかな? 「つかさ、いーの?カノジョ」 ……覚えてたんだ…… 「んー。へいき」 ……ほんとに、スルのかな?…… 酔ってもないのに。 長めのコートをハンガーに掛けながら、どきどきして。少し苦しくて。 「お風呂、先入るね」 ひとりになれる空間がほしかった。 「えー。一緒に入らねぇの?」 上着を脱ぎ捨てて、狭いお風呂の扉を開けた。 「かめも来いよー」 お湯を張る音に混じった、怖いくらいに優しい誘い。 ちょっと覗いたら、まだ溜まりきってない浴槽を覗いてる。 「あかにし…まじで、」 「ん?なに?」 水面を打つお湯の音に打ち消された、戸惑いの声。 ゆっくり近づいてきた彼を、ただ見つめる。 「…あか、にし…」 くちびるが、そっと触れて。 チュッと音を立てて離れる。 「かーわぃ」 ふんわり笑った顔に、キュウっと心臓が締め付けられた。  
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