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「どした?」
そんな行動に、キョトンとしながら聞いてくる。
「…ゃ…なんも…ない…」
近くに落ちてたバスタオルを引き寄せて、腰に巻いて。
あっ、と気づいたように、あかにしが顔を背ける。
……なんか、また勘違いされたかも……
ふっと息をついて、入ったお風呂場で。
鏡に写った自分を見て、やっとあかにしの言った意味に気づいた。
……メイク…ボロボロ……
擦ったせいで広がったパンダとか。
薄くなったリップとか。
手近にあったメイク落としで顔を洗って、数時間ぶりにじぶんの顔を見た。
……後ろも、出さなきゃ……
ひとりでするのは抵抗があるけど、やっぱ彼には頼めないワケで。
そっと片足をバスタブの縁にかけて、前から蕾に手を伸ばす。
「……っ…ぅ……」
指を浅く差し込んで、そっと掻き出して。
「かめ?終わっ……」
だけど何も知らずに扉を開けた彼に、動きが止まった。
「なに、してんの?」
絶句って言葉がピッタリな感じ。
「ナカ…お腹、壊すから…」
指を抜いたら、プチュって音がした。
「そ、なの?」
「うん…」
気まずく、会話が途切れた。
「わりぃ。
……おれが、しよっか……」
うん、って。
そう言いたかったけど。
「だいじょぶ。ちょっと外で待ってて?」
無理に笑ったかずは、バカ。
「もーいいよ?」
その声と一緒に恐る恐る開けられた扉。
そのとき、彼はもういつも通り。
身体を重ねて。
近くなりたかった距離が、ちょっとだけ遠くに感じた。
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