お月さまの向こう側

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  『今夜とか、会えないかなー。なんて…』 バイバイの間際の、その言葉。 『少しでも、いいですから…//』 照れながらとか、反則だよ…/// 「ちょっと遅くなるけど、いい?」 無意識に、甘えた声になるのが分かる。 『はい、だいじょうぶです。待って、ますね?』 詳しくはメールで、と切られた電話口で、ふふっと笑った。 女の子として扱われる嬉しさ。 優しい彼を騙してる、罪悪感。 ぜんぶが合わさって、甘い甘い恋の予感。 「かめ」 後ろから聞こえた、たっちゃんの声にビクッとする。 「どーし…」 振り向くのと同時に、パンっと頬を叩かれた。 「ばかっ」 涙でいっぱいの、たっちゃんの大きな瞳。 「かめは、なん、で…―――っ」 熱を持った頬を押さえて、かずはただ、呆然と聞いてたの。 「なんで、幸せから逃げるんだよっ」 ぽろっと一粒、涙をこぼした。 かずのために泣いてくれる人が、ここにいる。 呼びに来た中丸が、びっくりして騒いで。 そのときは、なにも返せなかったけど。 たっちゃんの言った幸せが、なんなのか。 かずにはだいたい、分かってたんだ。  
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