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Akihiko-side £ove
「だめだよ」
そう言ったかずちゃんは、泣きそうに顔を歪めた。
走り去るキミの後ろ姿を見つめながら、何がダメなの、と聞きたくて。
だけど聞きたくなんかなかったんだ。
繋いだ手の感触が、キミのウソを見破っていたから。
『おれは、かずちゃんが男でも構わないよ』
そうメールで打って、だけど送信ボタンを押すことは出来ない。
きっとこのひと言は、キミを傷つけるだろうから。
その変わりに打った文面は
『いきなりキスしてごめん。
よければまた、会いたいな』
と、伝えたいことだけを。
だけど浮かんだのは、石田さんの顔。
『泊まってもいい?』
震えながらそう言った、綴るような瞳。
それを拒んだのは、おれだ。
泣きそうな感情を必死で隠して
『ひとりで大丈夫』
と帰った彼を、追いかけるコトができなかった。
「……、逃げられてばっかじゃん」
ははっと乾いた笑いは、人波に消された。
追いかければ、まだ間に合う?
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