序章 出立

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ある日の昼下がり書庫には1人の男がいた。 歳は二十歳すぎ。 色は白く聡明な顔をした彼は書庫に入ってきた人物に気がつかない様子で一心不乱に本を読んでいた。 書庫に入ってきた人物は半ば呆れ顔で男を呼んだ。 「司孔(しこう)、潘符(はんふ)老師が呼んでいる」 「先生が…?」 司孔と呼ばれた青年は別に驚いた様子もなく読んでいた本を置き立ち上がった。 「あぁ、お前に頼みたいことがあるらしい。詳しくは知らんが…」 「わかった。すまない天喬(てんきょう)」 天喬。名を黄干(こうう)、字を天喬といい司孔の友人でもある。 少々無愛想なところがあるが頼りになる武人でもあった。 その天喬の横をすり抜けると司孔は老師の待つ部屋へと歩いていった。
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