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「大気圏突入のタイミングで、でありますか?」
ツキヒロが信じられないという顔で聞き返した。
「そうだ。古今東西、このタイミングで戦闘を仕掛けるというのは未だかつて例が無い。」
それはつまり、誰もが危険だと踏みとどまってきたことの証拠だった。
モビルスーツが大気圏の突入に成功したという例はない。
大気との摩擦熱により機体の装甲が溶けて、機体が燃え尽きてしまうからだ。
完全に地球の重力に機体をとられてしまったら最後、あとは死が待つだけ。
それ故、重力にひっぱられる前に離脱しなければならない。
「し、しかし、木馬はルナツーに寄っていたのですよね?モビルスーツは木馬に積まれているのでしょうか?」
そう尋ねたのは、レスティ・ファン・クルード准尉だった。
「間違いない。機体か、もしくは量産に必要なデータを積んでいる筈だ。そうでなければ、ジャブローを目指して単体で大気圏突入まではしまい。」
今はサラミス級が木馬に付き添っているが、サラミスは重力下での航空はできない。
つまり、木馬は単体で大気圏に突入するということだ。
それは同時に、木馬が大気圏内での活動も可能なことを表していた。
「単体で大気圏突入、か。ただの輸送船ではないということか。」
ツキヒロがそうこぼすと、シャアが木馬の説明をした。
「補給艦だと思わせるいでたちだが、木馬には戦艦クラスのメガ粒子砲も搭載されている。恐らく大気圏内でも運用可能な、連邦の新造戦艦だ。」
ツキヒロは戦慄を覚えた。
モビルスーツの開発、新造戦艦、連邦がジオンに追い付くのも、そう先のことではないような気がした。
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