第17章「雌雄」

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怒涛の勢いで迫る虎太郎。 そして、虎太郎の一撃が葵を捉えようとする瞬間。 葵の姿が闇に融ける。 「なっ?」 この戦闘で初めて虎太郎が驚きの声を漏らす。 そう葵の姿が闇に融けたのだ。 鏡が空間転移をする時のように。 視認できず、気配もなく、眼前には葵が構築した障界のみの空間。 「どういう事だ。」 『呪われた日向の血筋とはよく言ったものだな。まさか、オレにこの可能性が残されていたとは。』 葵の声だけが響くも相変わらず、視認できず、気配もない。 「隔絶者の力。」 虎太郎が小声でつぶやく。 葵は別空間で今度は観察していた。 別空間に身を潜めたからと言って、現状が大きく打破できたわけではない。 葵の一撃が軽く、浅く、虎太郎の鉄壁のガードを貫く事は難しい。 通常の方法では、、、 がしかし、どんな人間にも刹那の隙は生まれ、急所は存在し、正確に急所を穿てば良いのだ。 デリーターとは本来、そういう生業だ。痕跡をほとんど残さずほんの一刺しで命の灯を消す。能力者になると障界内で存在ごと消してしまえば良く忘れがちな基本中の基本。 「さて、基本に立ち戻るとすすか。」 別空間で自分に言い聞かせる。 そして・・・
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