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夕日が山の向こうに静かに沈む頃、李桜は赤い鳥居をじっと見上げた。
桜の巨木が見守る神社の鳥居を恐る恐るくぐると、いきなり風が目前の桜の木の葉を払い落とすかのように吹き上がった。
―――ザザザザッ!!
葉が互いを擦らせ音を立てる中、いきなりの突風に目をつむった李桜だったが、一瞬感じた浮遊感に疑問を抱き、再び目を開いた。
―――ハァッ!?
李桜の開いた視界に映し出されたのは神社ではなく、見事なばかりに青く澄んだ湖だった…。
慌てて背後を振り返ると、確かに自分が今くぐった赤い鳥居がある。
何かの間違いか、自分は今寝ぼけているはずだ…と気を取り直して、回れ右をして再びその鳥居を今度は目を瞑ってくぐる。
李桜の頭の中では、もとの雑木林が目を開いたときに視界に入るはずだ。
「よしっ!」
意を決して目を開く。
「マジかよ…」
愕然として呟く。
景色は変わることなく、振り返れば湖がある。そしてあるべきはずの神社はなく、名残として鳥居と桜の巨木が湖のそばにあった。
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