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廊下で話す男の声が、閉められたドア越しに聞こえる。
?「そんな事言ったって、ほとんど家にいない俺より、兄さんと椿さんの所の方があの子の……」
廊下の声が遠ざかって、やがて消えた頃にようやく肩の力が抜けた。
ベッドにダイブすると、太陽の香りがした。
お父さんが死んでから色々ありすぎて、なんだか疲れた。
勢い良くドアが空いたのは私がうとうとし始めた時だった。
??「葵ちゃーん!」
ドアが開いた勢いのまま部屋に飛び込んできたのは、さっくの人とは違う別の人だった。
しかも、葵ちゃーんって…。
?「兄貴、それ以上その部屋に入ったら殺すよ」
??「真琴ぉ、お兄ちゃんに向かってそんな事言っちゃ…ゴフッ!?」
鬱陶しい喋り方をするもう一人の男は、真琴と呼ばれた片割れに鉄拳を食らいうずくまってしまった。
私を買い取った人は真琴という名前らしい。
真琴「兄貴、話が早くて済む。あの子をつれて椿さんの所に帰れ」
どうやら、私は真琴ではなく片割れに引き取られるようだ。
?「ひょへびゃ、ぼほうはまのぎゅいごんぎゃ…」
うずくまったまま顔を床に踏みつけられて、言っている事の意味が分からない。
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