逃避

5/7
前へ
/35ページ
次へ
 余力を絞り、オウムは倒れている人物に近づいた。 「オイッ、生きてるか? それとも死んでるか? どっちでもいいから返事しろ」  オウムの声と翼の音で倒れていた人物は顔をあげた。 「これ以上生きるつもりはないのに、まだ僕を呼ぶのは何故だ?」  土気色の顔をした髭面の男。希望をどこかに置いてきてしまったような負のオーラを纏い、濁った眼をしていた。  感受性を一切削ぎ落とし、生きる喜びを拒否したようなたたずまいは、この大地に居ることを納得させる。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加