逃避

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「なあ旅人よ、一つ頼まれごとをきいてはくれないか?」  早口でまくし立てるようにオウムは喋る。うんともすんとも反応しない男をよそに、オウムは続けた。 「事情は後で話すから、とりあえずアンタの懐にワシを隠して貰えないか」 「懐に?」 「そうだ。今は一刻を争う、アンタがワシを隠してくれるというなら願い事を叶えてやらんでもない」  一方的な要求を突き付けられ男は困惑した。 「願い事など今更なんにもならない。僕はこれから天国へ行くのだから」 「なんだい自殺志願者か? どうりでこんな寂しい場所にいるわけだ」  そう言うとオウムは音域を上げ、ここぞとばかりに説得にかかる。
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