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彼女は肉親を失ってしまう恐怖に脅えていた。
「勿論です、姫君。
……どうか顔をお上げください」
マクシミリアンがクリスティアーネの手を取り、立ち上がらせる。
堰を切ったように泣きじゃくるクリスティアーネの肩を優しく抱きながら、マクシミリアンはジークの胸を拳で軽く小突いた。
「……生きて帰って来いよ」
「当たり前だ。クリスティアーネ様のことを頼むぞ」
「ああ」
ジークはにっと笑うと、親友でありライバルでもあるマクシミリアンの胸を同じように拳で小突く。
裏門の辺りが騒がしくなってきた。
どうやらジークが脱走したことがばれたらしい。
「……――行くぞ」
ジークはグレンツェンに騎乗すると、きりりと掛け声をかけ夜の闇へと消えて行った―――
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