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静寂。
なにかを叫んでいたアクセルの声が完全に消え去り、気味が悪いほどの静けさが現れた。
男はすぐに消えることはせず、闇の真横にたったまま顔だけをロクサスにむけている。
「アクセルは…どうなったんだよ」
「思い出したのか?
親友の名を…」
「…」
「あれの処分は我々が決める」
「処分なんかどうでもいい!
失った記憶を返してくれ!」
「それはできない」
「…なぜ…?」
「お前には、これから暫くこっちの世界で暮らしてもらう」
「アクセルも言っていた。
「こっちの世界」ってなんだ?
あたかも世界がいくつもあるような言い方だが…」
「じきに、わかるさ。
だがそれは今ではない。
記憶のないお前が…
この世界でどこまで通用するのか…我らはゆるりと見るとしよう」
そう言って、男は振り返り、闇の中に入っていった。
ロクサスはとっさに走り出し、闇の中に飛び込もうとしたが、すんでのところで闇が消え、飛び込むことができなくなったなった。
「なんなんだよ…くそっ…」
誰もいなくなった草原での呟きは、よりいっそうロクサスの心を不安にさせた…
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