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「はぁ…はぁ…はぁ…
(逃げなきゃ…もっと、もっと遠くに…)」
少女。
全力で、森の中を走っている。
息は切れ切れになり、すでに足元すらおぼつかない。
しかし、それでも少女を走るのを止めなかった。
いや、止めれなかった。
少女は、ただひたすらに走っている。
何かに追われているようだが、振り向く余裕など当然ない。
少女に迫る追跡者の姿は見えないが、しかし確実に「なにか」が少女を狙っていた。
「あっ!」
ガッ…!
一瞬。
追跡者の気配が薄れたほんの一瞬、僅かに気持ちが緩み、不覚にも確認しようと振り返った。
しかし、その瞬間足は大樹の太い根に引っかかり、少女は派手に転んでしまった。
少女はすぐに上半身を起きあがらせ、再び走りだそうとした。
動かない。
当然である。
限界を越え、なおも気力のみで走り続け、異常な負担がかかっていた足。
その足が、転んだことにより動くことを止めてしまった。
疲れきった足が一旦動きが止まってしまえば、それは本人の意志に関係なく当分はまともに動けない。
歩くことすらままならないだろう。
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