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音。
おそらく、追跡者が追いついて来たのだろう。
少女の顔には、明らかに恐怖がにじみ出ている。
物音は徐々に少女に近づいて行き、姿すら確認できないものの、すぐ近くにいる気配が強くなった。
ポタッ…
不意に、少女の黒く長い髪に上から降ってきた何かがついた。
少女は髪についた液体を手につけ、その正体を確認する。
しかし、それが何か確認した瞬間に、少女は奇声を発しながらヨロヨロとその場から離れようとした。
少女の美しい黒髪についた液体。
それは当然雨などではなく、もっとネバネバとした、不快感のみを与えるもの。
そう、涎である。
涎が滴り落ちてくると言うことは、当然それをだす犯人、つまり今まさに少女を食べようとしていた魔物がいると言うことである。
少女は上を確認することなく、ひたすらに動かない足で少しでも遠くに逃げようとした。
その時…
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